かなさんの仲間通信~地産地消の輪
第18回 イチゴ農家 小清水 規さん
はじめまして。
小田原でイチゴを作っています。小清水 規です。
神奈川県でイチゴ?と思われる方もいらっしゃるかと思います。
小田原のイチゴ栽培は戦前までさかのぼります。酒匂川が運んでくれた玉石を利用し、石垣栽培を始めたのが昭和5年とされています。小田原にはみかんや梅の栽培も盛んですが、これを受粉させる養蜂業も栄えていました。イチゴはミツバチのおかげで綺麗な円錐の果実になります。この事もイチゴを栽培するに適した環境だったのですね。
戦時中は国策により一時栽培を禁じられますが、昭和25年頃から待望の栽培再開となりました。
この頃からも「栃木」「静岡」のイチゴ栽培は盛んでしたが交通網は今ほど良くなく、雪で産地のイチゴが届かない事もしばしばありました。その為、東京に近い神奈川でも栽培は盛んに行われ重宝されました。現在では空輸で「福岡」のイチゴも東京で食べる機会が増えましたが、まだまだ神奈川イチゴは東京や県内で販売されています。
さらに最近では地産地消の流れもあり、近隣の大型直売所やスーパーの取り扱いも増え、イチゴ狩りまで出来る園も県内で増えてきました。
みなさんと農家の距離も縮まったので県内のイチゴ作りはより一層レベルアップしています。「天敵農薬」という、害虫を捕食してくれる有益生物をハウス内で放飼しています。この生物を飼う事で農薬を撒く回数を減らしています。
この他にも植物性のデンプンを撒いて害虫や病気を絡めて動けなくして防除したり、葉の表面にバチルス菌という納豆菌の仲間をコーティングして病気に掛かりにくくしたりします。
みなさんが洗ったイチゴをそのまま食べて戴けるよう、こういった化学物質に頼らない農薬で安全な商品を出荷し、県内イチゴ農家は新しい技術も取り入れ日々努力しています。このような機会に是非知っていただきたかった!!!
わたしの栽培している小田原市ではベテランの経験と若手の新技術がうまく融合していますが、それでも後継者不足は解消されず栽培農家件数は緩やかに減少しています。農地は減り、周りに住宅が建つことでさらに農業は追い込まれていきます。それは神奈川県全体で抱える深厚な問題です。
それでも「イチゴ」はみなさんとの距離は近い野菜です。大人から子供まで好きな野菜でもあります。ハウスまで来て、調理もせず直接食べていただく事で「地産地消」が完成しています。こんなに恵まれた野菜はありません。
農地や天候、安心安全や農家しか知らない野菜の知識まで!農家だから出来る皆さんとの距離を使って、環境と共に生きる農業を理解していただけるよう、情報を発信していきたいです!!!
執筆者プロフィール
小清水 規(コシミズ タダシ)
昭和60年9月11日生まれ
神奈川農業アカデミー卒業後、神奈川県農業技術センターの非常勤職員として農作物研究に携わる。
平成22年(2010年)4月に就農し、祖父と母と一緒にいちごを栽培しています。
完熟のおいしいいちごを皆さんにお届けできるよう、これからも努力していきます!!
栽培作物:いちご(さちのか)、米、トマト、各種野菜